楽器を見るポイント

モデル

現在のヴァイオリン製作は、過去の偉大な作家の作品をモデルとしており、現存する楽器の大半は以下のいずれかに属します。

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ストラディヴァリ・モデル


アントニオ・ストラディヴァリの1715年前後の楽器をモデルにしたものが多く、高音成分が多めの華やかな音色が特徴。最もスタンダードなモデルです。
f字孔はグァルネリ・モデル(下記参考)に比べ若干の丸みを帯びており、胴体上部と下部が横方向に直線的、Cカーブの上下部分は鋭角にくびれています。
アーチ(ボディのふくらみ)は、ストラディヴァリの師であるアマティよりも低く、そのため音量も大きくなっています。

グァルネリ・モデル


グァルネリ・デル・ジュス1735〜1740年前後の楽器をモデルにしたものが多く、低音の響きが豊かな重い音色が特徴です。
尖ったf字孔は、ストラディヴァリその他のものに比べると長く、そのためCカーブも長く傾きの少ないものになっています。また、カーブも緩めです。
アーチは平らと言ってよい程低く、その分音量も力強く大きいことが特徴です。

アマティ・モデル


17世紀イタリアのヴァイオリン製作家で、アントニオ・ストラディヴァリ、アンドレア・グァルネリの師匠でもあるニコロ・アマティの楽器をモデルにしたものです。
丸みを帯びたf字孔、胴体もまた丸みがあり、アーチが高く、音量は小さいものの甘い音色に特徴があり、室内楽に向いています。

シュタイナー・モデル


1600 年代に活躍したオーストリアの弦楽器製作者、ヤコブ・シュタイナーの楽器のモデル。18世紀後半、ヴァイオリンにより音量が求められるようになる以前は シュタイナーのヴァイオリンがストラディヴァリ以上の人気を集めており、モーツァルトも愛用していたと言われていますが、現在シュタイナー・モデルは非常 に珍しくなっています。
アーチは非常に高く、弦を全て外すと魂柱が倒れると言われています。音量は小さく甘い音色が特徴です。

木材・木目・杢(もく)

表板


ヴァイオリンの振動響板として重要な役割を持つ表板には、松の一種の「スプルース」(ドイツ語では「フィヒテ」)と呼ばれる木材が使われます。日本の松と違い真っすぐ生える松で、イタリア、ドイツのものがヴァイオリンに適していると言われています。強度の高い木材ですが、軽く、程よい柔らかさを持ち、振動板として最適です。
表板では木目が縦に走っていますが、これはいわゆる“年輪”です。色の濃い、細くて堅く色の濃い部分を〈冬目〉、巾の広い、白くて柔らかい部分を〈夏目〉と呼びます。一般的に木目の間隔が狭く、等間隔できれいに揃っているのが良質と言われており、それは響きにも影響すると言われています。
表板は左右対称の2枚板で作られますが、これは均一な振動が得られるためです。

裏板、側板、ネック


裏板、側板、ネックには「メープル(楓)」が使用されますが、これも日本で見られる楓とは違い、ボスニア地方に生息する楓です。裏板、側板は楽器の振動板としての役割よりも、表板の振動を効果的に支える役割を持っています。そのため適度な硬さに加え、美観に優れたボスニア地方の楓が使われるのです。
裏板の特徴は、何と言っても横に走る美しい木目にありますが、この木目は年輪ではありません。(年輪は縦に走っています)横に走る木目模様のことを〈杢(もく)〉といい、横にはっきりと出るので〈虎杢〉とも呼ばれ、その美しさはヴァイオリンそのものの美術品としての価値を測る重要な要素となっています。この杢の有無は音質とは無関係です。
裏板は表板同様2枚板を貼り合わせたものと、1枚板のものがあります。1枚板はより大きな樹木が必要になるので数も限られ、貴重品として扱われますが、音響学的な優劣はないとされています。

パフリング、コーナー

パフリングとは


パフリングとは表板と裏板の外側を縁取る黒い二重線のことです。黒い二重線と書きましたが、正確には深さ2ミリ程度に埋め込まれた、黒・白・黒の合板のことで、パフリングには、ヴァイオリンをぶつけたときのダメージを最小限にとどめる働きがあると言われています。しかし、実際のところ装飾的な意味合いの方が大きく、製作者の腕の見せどころのひとつでもあります。

パフリングの材料


パフリングの材料は流派により違いが大きく、楽器の真贋を判断する手がかりになる場合もあります。白い部分は楓、ポプラ、梨などが用いられてきました。黒いところは黒檀、オランダでは鯨のひげ、染めた紙を使う流派もありました。ストラディヴァリなど昔のクレモナの製作家は黒く染めた西洋なしを使用したと言わ れています。この場合、人の体が接するなどしてニスが剥げると染料が退色しグレーになってきます。このパフリングの色は、古いクレモナの楽器かどうかを判断する有力な手がかりになると言われています。

パフリングのコーナー


ヴァイオリンの表裏あわせて8つあるコーナーは、2 方向から来るパフリングの断面を斜めに切り、ぴったり合わせて作ります。パフリングの合わせ目は製作者の技術や個性が発揮される場所です。ストラディヴァリのコーナーは、パフリングの合わせ目が中央ではなく上コーナーでは下向き、下コーナーでは上向きという風にCコーナーの中央に向かうようにカーブしています。このパフリングの形状はストラディヴァリの大きな特徴として知られています。

スクロール(渦巻き)

スクロールと音質


ヴァイオリンのスクロールは、裏板、横板と同じ木材を使って作られます。
一般的に音質には影響がないと言われていますが、非常に細かく丁寧な作りが要求される部分ですので、製作者の腕の見せ所という意味では、スクロールが美しい楽器は全体の作りも美しく、技術の高い職人が製作した楽器といえます。

モデルによる差


正面からスクロールを見たとき、ストラディヴァリは直線に近く、アマティは大きくカーブしているのが特徴です。またストラディヴァリのスクロールは非常に端正で美しく、均整がとれていますが、グァルネリは無骨だと言われています。実際グァルネリ・デル・ジュスのスクロールは父親のジュゼッペが作っていました。父親の死後は、スクロールの作風ががらっと変わったと言われています。グァルネリの楽器はそれを補ってあまりある音質の良さが、現代でも銘器として受け継がれる理由となっているのです。
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